年末になると日本ではベートーヴェンの第九交響曲が演奏されます。
最近ではベートーヴェンという作曲家が注目されている傾向があり、今まで英雄(三番)、運命(五番)、田園(六番)、合唱付き(九番)が有名でしたが、クラシック界ではC.クライバーの手によって四番が、日本では世間的にのだめカンタービレの影響で七番が有名になってきています。
しかし、依然として合唱付き交響曲、通称“第九”は日本のみならず世界的に見てもクラシック音楽史上最も有名な楽曲であり、作曲、初演、音楽史に照らし合わせて見ても、演奏されるシーンと時期から他のどの曲も“侵すことの出来ない絶対的な高み”に位置する名曲です。
私の知る限り、第九の録音の全世界共通認識としてトップに位置するものは、戦後、ワーグナー祭典であるバイロイト音楽祭が復活した際のセレモニーの場で演奏された音楽の守護者、フルトヴェングラーが指揮を執った1951年盤です。
しかし、51年録音という事で、録音状態もモノラル、品質も今ではだいぶ古さを感じてしまう、という事で、私はあえてそこからさらに現代へ時代をシフトした1989年のX'masに録音された、通称“ベルリンの壁崩壊ライブ”を推薦したいと思います。
啓蒙家としても知られた音楽家であり、名指揮者であったレナードバーンスタインが東西ドイツ、イギリス、フランスから楽団員、ソリスト、合唱団をそれぞれ招集し、ブランデンブルグ野外ステージに於いて行った第九交響曲演奏会は、喜び(Freude)という詩を自由(Freiheit)と変更し、『喜びの歌』ではなく『自由の歌』として演奏して第九演奏史上のみならず世界史上でも重要な記録を残しました。
翌年にこの世を去った巨匠バーンスタインは老年による円熟をその身に極め、各界の重要人物、観客を前に終焉直後に壮大なスタンディングオベーションに迎えられるほど大きな成功と感動を、世界中に発信したのです。
CDとして発売され、長らく映像としての発売がなかったこの演奏ですが、つい先日、DVDとしてライブ映像が発売されたようです。
数々の第九が存在する中(聴く聴かないという事も含めて)どれを聴くか迷うところですが、こういった祝典的な演奏もいいかもしれません。
PR